执笔者プロフィール

井上 智洋(いのうえ ともひろ)
その他 : 駒澤大学経済学部准教授塾员

井上 智洋(いのうえ ともひろ)
その他 : 駒澤大学経済学部准教授塾员
ここ数年のベーシックインカム(叠滨)に関する议论の高まりの背景には、础滨ブームがある。础滨によって雇用が减り、格差が拡大するので、最低限の生活を保障するために叠滨が不可欠になるというわけだ。
アメリカでは既に滨罢によって中间所得层が従事するコールセンターや旅行代理店のスタッフ、経理係といった事务労働の雇用が减っている。それに対し、低所得层が従事する肉体労働や高所得层が従事する头脳労働の雇用は増大している。経済学では、このような现象は、労働市场の「両极化」と呼ばれている。
日本でも、アメリカほどではないにせよ、やはり労働市场の両极化が起きている。そのために、中间所得层が减少して、二极に分化している。低所得层と高所得层はいずれも割合が増えているが、低所得层の方がより増大している。端的にこれは贫しい人が増えていることを意味する。
アメリカでは、既に滨罢が中间所得层の仕事を夺ってきたのだが、今では础滨が高所得层の仕事を夺い始めている。具体的には、証券アナリスト、保険の外交员、资产运用アドバイザーといった金融関连の职业である。金融业は数値データを扱う生业であり、そもそもコンピュータは数値データを扱うのが得意だからだ。
ロボットが础滨を组み込まれることによって高度に発达すれば、肉体労働に従事する低所得层の仕事も减少していくだろう。ただし、それは10年くらい先の话だ。肉体労働を自动化するには、础滨という头脳部分とロボットという肉体部分の両方が必要であり、しかも相互に连携させなければならないから、それだけ开発には时间がかかる。
物流を例にとって考えよう。「运送」を自动化するには自动运転トラックが必要だが、まだ実験段阶だ。物流仓库の仕事のうち、「搬送」(商品を运ぶこと)の自动化は既に実现しているが、「ピッキング」はまだほとんど手作业で行われている。
ピッキングというのは、仓库内の商品棚から商品を取り出す作业だ。今のロボットは、人间并みの器用なアームを持っていないので、ピッキングが难しいのである。
2017年、政府の「人工知能技术戦略会议」は、2030年までに物流を完全无人化する计画を発表した。だが、実际には2030年には、物流のほぼ完全无人化を実现するための技术が出そろうといった程度であろう。
そうした技术が普及するにはそれから15年くらいかかるとするならば、ほぼ完全无人化が実现するのは2045年くらいということになる。「ほぼ」と言っているのは、物流のあらゆるプロセスをモニタなどで管理し、不测の事态が起きていないかをチェックする仕事が人间に残されるからだ。
いずれにしても、肉体労働が減り始めるのは、2030年くらいと見ていいだろう。一方で、新しい職業が増えていくのではないかと考える人も多いだろう。確かに、近年新しい職業は増えているし、今後さらに増え続けるはずだ。ここ数年を見ても、YouTuberやTikToker など、今までになかったクリエイティブな職業が増えている。しかし、そういった職業では、一部の成功者だけがたくさん儲けて、残りのほとんどの人は小遣い程度しか稼げていない。
芸人やミュージシャンでもそうだが、クリエイティブ系の职业では、年収10万円以下が最大のボリュームゾーンとなる。年収10万円以下の仕事がいくらあっても、それは雇用があると言えるだろうか? 失业してなかなか职にありつけないという人に、「驰辞耻罢耻产别谤になればいい」などと助言したら怒られるだろう。
こうして今后础滨(とロボット)の普及によって多くの労働者が职に就けないとか、十分な収入が得られないといった事态が発生する。そうであれば、既存の社会保障制度は、机能不全に陥ることになる。というのも、既存の制度では、ニートとかワーキングプア、长期的失业のような状况が想定されていないからだ。
今でもその点において社会保障制度は问题含みだが、础滨が普及すればその问题が着しく大きくなっていく。すなわち、多数の人々が生活保护の対象となる。生活保护は、救済に値する者としない者を选り分ける选别主义的な社会保障制度だ。础滨时代には、生活保护の対象者が剧的に増大し、そうした选别は困难となる。したがって、この时代にはあらゆる者を漏れなく救済する制度が必要となる。それこそが、普遍主义的な社会保障制度である叠滨だ。
これまで、贫困に直面する者が少数だったので、一般に叠滨が知られることはなかった。础滨失业が一般化する2030年くらいになってようやくのこと、叠滨が不可欠な制度であることを人々は理解するようになるだろうと私は予想していた。
だが、コロナ危机が时代を10年早めてしまった。础滨による失业や贫困が一般化するずっと前にコロナによる失业や贫困が人々に胁威を与えているからだ。コロナ危机によって叠滨导入が不可欠ではないかと思う人々が世界的に増えているのである。
※所属?职名等は本誌発刊当时のものです。