执笔者プロフィール

锦田 爱子(にしきだ あいこ)
法学部 教授
锦田 爱子(にしきだ あいこ)
法学部 教授
画像:ガザのビーチで海水浴を楽しむ人々(2004年、藤屋リカ撮影)
広がる飢饿
ガザ地区で飢饿が问题となり始めている。戦闘开始から5カ月が経过し、物流がこれまで以上に厳しく制限されたガザ地区では、人が生きていくのに最低限必要な食料や、安全な饮み水、医薬品、発电に必要な燃料も不足した状况だ。わずかな食粮配给に空の锅を手にした子どもたちが集まり、じゃがいもがまばらに浮いたスープを持ち帰る様子が报じられている。大人数の家族が多いガザ地区では、とても足りない量だ。実际に、ガザ地区ではすでに栄养失调と脱水で命を落とす人々が出始め、础笔通信によるとその人数は3月9日时点で20人以上に上るという。
物资の不足は特にガザ地区の北部で深刻だ。退避勧告は出たものの、自力で移动できなかった人々など30万人以上が、まだ北部には残る。支援物资を载せたトラックが来ると、到着を待たずにトラックに群众が群がり、积み荷を夺っていく状态だという。奥贵笔(国连世界食粮计画)は2月20日、职员が「市民秩序の崩壊による完全な混乱と暴力」に耐え切れなくなっているとして、ガザ地区北部への食粮输送の一时停止を発表した。
それから2週间后、支援を再开した奥贵笔のトラックは、今度はイスラエル军に进行を阻止され、検问所で3时间止められた挙句に引き返すことを余仪なくされた。空中投下される支援物资のパラシュートがうまく开かず、地上の市民に直撃して死者が出る事故も起こり始めた。そもそも空中投下では十分な量を、适正な配分で届けることはできない。人々に支援が届かない紧急事态に対して、アメリカと贰鲍はガザ港に埠头を设置し、キプロスから船で支援物资を运び入れる方策の検讨を具体的に进めている。
市民を巻き込む戦闘
10月7日の开戦以降、ガザ地区では市民を巻き込んだ攻撃が続いてきた。死者の数は既に3万人を超え、7万人以上が负伤し、まさに人道的危机としか言いようのない状况だ。世界有数の人口密集地と言われるガザ地区では、市街戦が始まれば多くの民间人の犠牲者が出ることが初めから指摘されていた。2000年代に入り4度繰り返されてきた过去の戦闘でも、それは既に明らかだった。今回の戦闘も、市民を巻き込むことを十分承知した上で展开されている军事攻撃ということができる。
発端となった10月7日の奇袭攻撃で、ハマースをはじめとするパレスチナ武装势力は千人以上のイスラエル人の民间人の命を夺った。袭われたガザ地区周辺のキブツは、急进的な现在のネタニヤフ政権に比べると、リベラルで世俗的な市民の多いコミュニティだった。袭撃はこれらのイスラエル人からも対话の希望を夺い、むしろイスラエルの世论を硬化させた。だがそのことは、ガザで市民を杀すことへの免罪符になってはならない。戦闘时においても守られるべき秩序があることを国际法は定めており、それぞれの犯罪は各场面において裁かれ、処罚される必要がある。报復の连锁は止めなければならない。
ラファを越えられない人々
この戦闘の特徴は、攻撃対象とされた地域の人々に、ほとんど逃げ场が与えられていないことだ。アフガニスタンやイラク、シリアで戦争が起きた际は、多くの难民が国境を越えて周辺国へ逃れた。しかし今回のガザ攻撃で、隣国へ逃れることができた人はごくわずかだ。隣接するエジプトが、パレスチナ难民の受け入れを拒否し、国境を闭ざしているからだ。そこには一度受け入れたが最后、帰还が困难となった难民の滞在を认め続けざるを得ないという事态への警戒がある。実际にイスラエル建国以来、ヨルダンやレバノンには80年近くの长きにわたり、帰还できない难民が住み続けている。同じ辙を踏むことをエジプトは恐れており、新たな难民问题は3月10日现在、まだ起きていない。
だが日々繰り返される爆撃の中、退避を繰り返した人々は消耗し限界を迎えつつある。持病を抱えた高齢者や、攻撃による负伤者など、一时的にでもガザ地区から退避を望む人々は多い。彼らを阻むのは、厳しい越境手続きの壁だ。ガザ地区を出るにはラファ検问所を越える必要があるが、开戦后、越境を许されたのは、紧急治疗を必要とする重症の患者か、二重国籍で外国のパスポートをもつ者にほぼ限られる。いわば事実上の国籍による差别が生じている状态だ。
自治政府のパスポートしかもたない者の越境はきわめて困难で、弱みに付け込み高额な渡航费を要求し、密航を手伝う仲介业者が横行している。多くの人々が、戦闘の続くガザ地区に闭じ込められた状态にある。エジプトへの越境希望者リストに名を连ねるため、出国先として希望する国の外务省が働きかける场合もあるという。日本に家族がおり、渡航を希望する者もいるが、ラファの通过は难しい。停戦の见通しが立たず、人道的に困难な状况におかれたガザ地区から1人でも多くの命を救うためには、各国ができる手段を尽くしていくことが求められている。
※所属?职名等は本誌発刊当时のものです。