执笔者プロフィール

川野 裕一朗(かわの ゆういちろう)
その他 : 東京大学東洋文化研究所特任研究員塾员

川野 裕一朗(かわの ゆういちろう)
その他 : 東京大学東洋文化研究所特任研究員塾员
2年後に迫った東京オリンピックに向け、観光立国という方向に邁進する日本。2015年に文化庁主導で始まった「日本遺産(Japan Heritage)」事業など記憶に新しいのではないだろうか。地域に分散する文化財を、地域特有の歴史やストーリーに基づいてまとめ上げ、整備し、世界に向けて情報発信するこの事業は、文化財版の「クールジャパン戦略」とも言える。
近年の文化财をめぐる方向は、文化财の「保护から活用へ」向かっているようだ。2018年通常国会で可决された改正文化财保护法(2019年4月1日施行)も、このような动向と无縁ではない。改正案の趣旨には以下のようにある。
「过疎化?少子高齢化などを背景に、文化财の灭失や散逸等の防止が紧急の课题であり、未指定を含めた文化财をまちづくりに活かしつつ、地域社会総がかりで、その継承に取组んでいくことが必要。このため、地域における文化财の计画的な保存?活用の促进や、地方文化财保护行政の推进力の强化を図る。」(文化庁HPより引用)
その内容は「文化財保護法の一部改正」と「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部改正」から成る。 改正の詳細には深く触れないが、その骨子は、これまで国が所管していた文化財行政の権限の多くを、都道府県、さらには市町村といった地域へ委譲する点にあるだろう。移譲された権限をもとに、地域がより柔軟に文化財の保護や活用を進め、地域づくりやまちづくりに文化財を活用できるようにすること、それが改正の狙いとなる。
本改正において何より期待されるのは、文化财の保护活动に、これまで以上に地域が権限をもって临めるようになることだろう。地域の様々な立场の人々が関与し、文化财ごとの実情に合う、より柔软で持続性の高い保护や活用の実现が期待される。また、地域の未登録文化财を、地域主导で国の文化财保护体制下に组み込む试みは、文化财の価値基準に地域の思いをより强く反映させることにも繫がるだろう。
一方で、文化财へ当事者以外の人が関わることで、保护よりも活用や商业利用が重视されるのではないか、さらに「稼げる/稼げない」といった経済的な観点から文化财同士の竞合に巻き込まれ、文化财の変质や、改変を引き起こしてしまうのではという危惧が、国会での质疑や、地方史研究协议会などの学术団体から寄せられている。
确かに、地域の文化が、国の文化财に指定されることで今までにない注目を浴び、その环境を激変させることがある。新たに観光目的で利用されることも少なくない。その结果、文化财に想定外の変化が生じ、保护?継承活动に齟齬(そご)が生じたという事例は、文化を「文化资源」として活用する文化の资源化に関する议论などの形で数多の报告がなされている。私も、现地调査の场でしばしば耳にする事例である。
しかし、活用に伴うリスクを警戒することはもちろん大事ではあるが、过度に保护のみを优先し、活用を悪しきものとステレオタイプに批判する姿势は、保护や継承に苦しむ当事者への共感が欠如した理想论でしかない。
少子高齢化、过疎化を前に、今まさに継承の危机を迎えている地域にとって、文化财を活用し当该地域の活性化を目指すことは、生き残りをかけた大事な戦略である。その过程において、身近に文化财と接することで、文化财保护活动に対する协力や理解が育まれることもある。保护と縁远いように见える活动が、结果的に文化财の保护活动を充実させる例も少なくない。
「保护から活用へ」という流れの中、文化财に対して、保护と活用のバランス感覚を持った接し方が、今后ますます求められるだろう。改正内容を见ても、その责务は、今まで以上に地域の人间に委ねられることとなる。
その上で、今后は文化财に留まらず、文化财を取り巻く地域の社会环境をも视野に入れた议论が必要となるだろう。
以前、私は、中国地方の神楽研究を通じて高校生の担い手と接したことがある。彼らは、幼少期から神楽を舞い続けている期待の后継者であった。しかし、彼らは高校卒业后、进学や就职により地元を离れることを余仪なくされ、中には神楽を諦めざるを得ない者もいた。継承への热意は强くても环境がそれを许さないという话は、おそらく全国各地で闻かれる课题の1つだ。
文化财の実情をもっとも把握している者は、所持者や担い手、学芸员など地域の有识者だろう。一方で、文化财の置かれた社会环境を客観视し、保护の必要性や活用の方向を见定めるには、外部の他分野からの视点も必要だ。
文化财を中心に、所持者、担い手、有识者、地域社会と同心円状に広がる登场人物をまとめ上げ、文化财のより良い保护と活用を进めるプラットホームとなる地方行政の存在は、今后ますます重要なものになると私は考える。
※所属?职名等は本誌発刊当时のものです。