执笔者プロフィール

广瀬 阳子(ひろせ ようこ)
総合政策学部 教授
广瀬 阳子(ひろせ ようこ)
総合政策学部 教授
画像:テヘラン北部タジュリーシュ広场にあるイマームザーデ?サーレ圣庙
提供:贯井万里
イランはロシアの地域政策、中东政策において高い重要性を持つ。特に、2014年の「ウクライナ危机」以降、欧米から経済制裁を発动され、世界的に孤立しているロシアにとって、イランとの协力関係は、自国外交という観点のみならず、地域の安定维持のために肝要となっている。また、ロシアがその解决で主导的立场をとりたい「シリア问题」でも、イラン、トルコとの协调が不可欠な状况である。
他方、米国との関係がますます悪化しつつあるイランにとっても、ロシアとの関係は重要である。ロシアは以前から、米国に対抗する上で、イランと利害を共有しており、対イラン制裁に反対するなど、イランとは概して良好な関係を保ってきたと言ってよい。最近も、米国が対イラン制裁を强化する中、ロシアはイラン产原油の输出継続を主张し続けている。イランはロシアと二国间レベルでの関係紧密化に止まらず、中ロが主导する上海协力机构にもオブザーバー参加し、正式加盟を目指しているという。イランはイスラエルや多くのアラブ诸国と紧张関係にあるが、ロシアは、イスラエルはもちろん、アラブ诸国とも概して良好な関係を维持しており、今后の中东和平においてロシアが键を握る可能性も高い。
そして、イランとロシアの関係紧密化は近年、特に顕着になっている。2018年8月には、カスピ海沿岸5カ国による合意が成立した。かつて世界一大きな湖であるカスピ海の沿岸国はソ连とイランのみであったが、1991年のソ连解体により、沿岸国が5カ国に増えた。そして欧米の技术の利用が可能になったことでカスピ海の石油や天然ガスという海底资源の採掘が可能になると、沿岸国の间でカスピ海の领海问题と法的地位の问题が浮上した。既成事実の积み上げで资源採掘は进められたものの、それらの问题によって地域の紧张が引き起こされ、また、カスピ海の海底パイプラインの建设も困难になっていた。昨年の合意でも、カスピ海の法的地位は、海でも湖でもない特别な地位という玉虫色の结论になったが、カスピ海の问题は沿岸国だけで决定していくこと、沿岸国以外の军舰の侵入を禁止することが决定されたことは、欧米、特に米国の影响力を退けたいロシア、イランにとっては大きな胜利と言えるだろう。
ロシアはこれまでもカスピ海からシリアに巡航ミサイルを発射するなど、中东政策でカスピ海を戦略的に利用してきたが、本合意で、ロシアはカスピ海の制海権を确立したことになり、カスピ海の戦略性はさらに増しそうである。加えて、ロシアとイランのカスピ海における军事协力もさらに紧密化すると考えられている。
なお、资源の採掘や海底パイプラインの建设は、関係国の合意により可能となった。だが、海底パイプラインの建设には、环境アセスメントの结果を沿岸国が认めることが要件となっており、地域における影响力を削がれるとして海底パイプラインに反対していたロシアは、逃げ道を确保できた。
このカスピ海合意前から、鉄道、道路、运河などのインフラ整备や経済、観光などの促进に向け、カスピ海沿岸国および周辺国の地域协力が活性化してきたが、この合意はそのムードをさらに促进している。特に、ロシアは、アゼルバイジャン、イラン経由で自国とインドを船、鉄道、道路で结ぶ约7200キロメートルの南北输送回廊を、2020年にも完成させたい意向だ。それが完成すれば、中国の「一帯一路」に対抗しうる输送网となるはずであり、中国と表面的には连携を强化しつつも、本音では不信感を募らせるロシアにとって、ユーラシアでの影响力を挽回する重要なツールにもなりうる。そうなればイランもユーラシアのハブになり、地域における存在感も高まるだろう。
だが、现在、米国はイラン原油全面禁输に舵を切り、日本などへの提供除外も2019年5月に撤廃されることになった。日米同盟を外交の根干としている日本にとって厳しい局面であるが、イランの重要性に鑑み、最善の外交方针を模索するべきだと考える。
2018年9月、河野太郎外相がロシア?イランを结节するコーカサス叁国を歴访した。日本の外相によるアゼルバイジャン访问は1999年以来であり、アルメニア、ジョージアへの访问は史上初となった。コーカサスは日本にとって驯染みが薄いが、欧亜の十字路に位置し、またアゼルバイジャンは资源产出国でもあり、戦略的意义が极めて高い地域である。コーカサス叁国との関係を强化し、纷争を多く抱える同地の安定と発展に贡献する日本の意欲を示したことは、日本外交において大きな意义があり、高く评価されるべきである。ロシア?コーカサス?イランというカスピ海地域は中东やユーラシアの平和と安定の中心地点である。日本はそれら地域を「点」ではなく、「面」で捉えつつ、包括的かつ柔软な外交を进めていくべきだろう。
※所属?职名等は本誌発刊当时のものです。